免許取得・納車

 はれて免許も取得し、おかんのギャランを乗り回して遊んでいた頃、ルキノはやってきた。
 今度はちゃんと親戚のおっちゃんとディーラーの人はルキノとバンの二台で来ている。いよいよ納車のようだ。
 おかんと父ちゃんが何やら書類について説明を受けている。そばでずっと見ていたが、何が何やらさっぱりわからん。数十分後、手続きが全部終わったらしく、親戚のおっちゃんとディーラーの人は帰り支度をしはじめる。帰り際に親戚のおっちゃんに「大事に乗れよ」とかそんな事を言われた気がする。
 早速外に出てルキノを見る。兄貴とおかんと父ちゃんも出てきて一家総出でルキノを眺める。
 いっちょどんなもんか乗ってみるぜ!と意気込んでルキノに近づこうとしたら、なぜか急にエンジンスタート。マフラーから「ボボォ」という音が鳴り、一速にギアを入れる「ガチャン」という音の後、発進していった・・・。
 父ちゃんに先越されました・・・。すぐ家のまわりを一周してきて戻ってきたからいいものの、子供の楽しみを奪うとは何というオッサンだちくしょう!とひきずり降ろし、いざ出陣!!
 教習車とはあきらかに違うコックピット。クラッチも若干重い気がする。窓を開け、父ちゃんに発進のレクチャーを受けながらクラッチミート。
「ガコッギギギ!!プスン・・・」
 ルキノとの最初の対話は大失敗。エンストし家族は大爆笑。初心者なんだから仕方ねぇだろ!と悪態をつきながら今度はアクセルを多めに吹かしてインチキ発進。窓を開けてるし、オーディオのMDには何も入ってないのでエンジンとマフラーの音しか聞こえない。それにしてもマフラーの音でけぇなぁ・・・うへへ。
 近くに住んでいた後輩に速攻でメールを送り、クルマを自慢する。後輩の前でクルマをとめる。
「先輩の家から出てきたときもうマフラー音でわかりましたよ。」と言っていた。そんなにデカいか。まいったな・・うへへへ
 初日はあんまり遠出せずそのくらいにして、おとなしくしておいた。その日から、布団に入るたびにルキノの事で頭がいっぱいになるのであった♪

 数日後・・・。ルキノの運転にもだいぶ慣れてきて、道路を流すぐらいならワケないくらいになってきた頃。
 卒業した高校にOBとしてクルマで行ってやろうと企て、吹奏楽部で使っていた打楽器のスティックをクルマに積んでいざ出発。このあと想像を絶する恐怖が待ち構えているとも知らずに・・・。
 初心者マークをつけて走ること10分程度。岩坂という急カーブが連続するわりと勾配のある道にさしかかる。法定速度に慣れてしまっていたばろんはカーブでは減速するもトロトロ走るのがイヤなのでちょっとした直線でもアクセルを開けて65キロ前後まで出して走っていた。
 3つ目くらいのカーブを抜けて前方を見ると何とミニパトが・・・!!運転していてパトカーと遭遇したのは初めてでかなり焦った・・・。初心者心理にパトカーとはとても恐ろしいもので、「やべぇぇぇ・・・こえぇなぁ・・。マフラーがうるさいとかいって捕まったらどうしよう・・・。法定速度って60キロだったよなぁ・・・」と色々不安が浮かんでくる。パトカーと絶妙な車間距離をとりつつ、スピードメーターに目をやる。61キロ出ていた。
「やべ。警察は汚い連中だから60キロを1キロでも越えたらピーポー鳴らして俺を捕まえるに違いないぜ。」と許容範囲という言葉を知らずに55キロくらいで追走。
 だが気を抜くと60キロ出ている!すかさずブレーキ!ルキノの後ろを走っていたクルマはさぞかし迷惑だったであろう。ごめんよ。
 そしてミニパトは警察署に帰る途中だったらしく、警察署のちょっとむこうにある母校に行くまでの間ずーっとそのミニパトの後ろをそんな調子で走り続けるのであった。


 パトカーをなんとかしのいで学校に到着。久しぶり(でもないけど)に見る後輩どもの面構え。なるほど、偉大な先輩ばろんが部活を引退した後だ。大きな支えがいなくなった部員達は自分達でそれをカバーしようと一生懸命にやっている。何とも先輩冥利に尽きるものよのぉ。とルキノと関係ない話はさておき、後輩の一人が早速・・・
「先輩、クルマで来たんですか?乗っけて帰ってくださいよ〜」ときたもんだ。
 しょうがないな乗りたまえ。と、乗せたのは他でもないOverTakeのメンバーであるYFだったのだが、ミニパト騒動に続いてルキノとばろんに今日二つ目の大きな試練が待ち構えていようとは神でさえも知らざる予定調和ともいうべきメタファーというかデカメロンみたいな感じであった(謎)

 YFが「ナフコ(ホームセンター)に行きましょう。髪の毛につけるワックスが欲しいです。」と先輩を遠まわしにアシに使おうとしているのにも気づかず、人にクルマを自慢できて上機嫌なばろんはナフコへ直行。駐車場にさしかかるわけだが、ここで悲劇は幕を開ける。バックで駐車などというシャレた事をまだマスターしていなかったばろんは輪留めのある駐車スペースへルキノを頭から突っ込む。輪留めにタイヤが当たればOKだろうと思ったのが甘かった・・・。
「ガリ・・・」
 と、とても嫌な音・・。結構デカい音がした気がしたけど・・・。あわてて外に出てみてみると、輪留めに当たっていたのはタイヤではなくバンパー。すなわちFRPでできたフロントエアロだったのだ!!
 初心者ならよくあるさ。あんまり割れたりしてないから大丈夫だ。と比較的落ち着いてナフコ店内へ。たしか、ここで結局YFは気に入ったワックスが無い!と抜かしやがり、何も買わずに店を出た気がする。YFを家まで送ってやり、ばろんも自宅へ帰る。父ちゃんがルキノをチラリと見て、「お前、前のバンパーもう擦ってるじゃないか」と鋭いご指摘。人のイヤなところばっかり見つけるのうまいんだから・・・。
 よ〜く見ると、というか父ちゃんに言われて初めて気付いたんだけど、輪留めにぶつかった衝撃で、輪留めに当たった箇所が擦れて塗装が剥がれただけでなく、ググッ押されてフロントマスクがエラ張ったみたいになっていた。これを見たときさすがに凹んだ・・・。超詳しく3DCADを使ったCGで再現するとこんな感じである。