モノと語り合う・・・


 この言葉はばろんが七月で一番感銘を受けた言葉です。

 ばろんは仕事で製品の品質を検査していました。まあ簡単に言えば金属の表面を鏡みたいになるまで磨く仕事だったのですが、これがなかなかうまくできずにイラ立っていると、この仕事をくれた上司の方が、「仕方ないな、手伝ってやるか。」と製品を一個手に取り、磨き始めました。

 順調に磨いていく上司の様子をばろんはじっと見学していました。しかし、最後の鏡面仕上げの段階で表面に大きな磨きキズがあらわれました。上司の方は、鏡面仕上げ用の研磨台をきれいに清掃して再度磨きなおして「こんなもんかな?」とばろんより圧倒的にキレイな断面を見せてくれました。

 ばろんは何故そんなにもキレイに磨けるかコツを聞くことに・・・。

 上司の方は顔色も変えず、「コツ?製品と語り合うことだな。」と言っていました。ばろんはもっと直接的で技術的な意味でコツを聞きたかったのに・・・と思いながら「精神的な部分の話ですか・・・?」と聞き返しました。

製品と語り合う?

そんなおかしな話が現実にある訳がない!もっと使えるネタをくれぃ!!(;谷)ノ・・・と心中思いながらの言葉でした。
すると上司の方は「いや、精神的な話じゃなくてな・・・」といい始めました。
本当に物理的に製品とおしゃべりしてりゃ磨けるのかよ!?変な事をいう人だなぁ。と思っているばろんを尻目に上司の方は続けます。

「・・まぁ、製品と語り合うなんておかしな話だけどな。要はモノと語り合うことが大切なワケ。
さっきだって俺が磨いてる時表面に磨きキズが残ったろ?あれはバフ(研磨台)にゴミが付着してることを製品が教えてくれたって事。俺はちゃんと製品の声を聞いたからバフのゴミをとったんだ。そういう製品(モノ)の声に気付く感性を養うことがコツだといいたかったんだよ。

 磨こうとする製品と語り合わないって事は何も考えずにただ研磨台に製品を押し付けているだけ。それだけの作業なら赤ん坊でもできる。まぁ実際に赤ん坊がやるワケじゃないけどな。」


 まさしくばろんは赤ん坊でした。
表面にキズが残っても高速で回転する研磨台に製品を押し付けている時、製品がブレまくっても、ただ「早く磨かなければ・・・」と思っているだけでモノの声を聞こうとはしませんでした。

 表面にキズがあるってことはバフにゴミがあったり、サンドペーパーが破れてめくれていたり。
 製品がブレるってことは回転の反動で製品が研磨台からふっ飛ぶ前兆である危険信号。また、まんべんなく表面が均一に磨けてないという事だと教わりました。



 クルマにしたって同じ事です。
ストラットナットとホイールナットがゆるんでいればステアリングに伝わるレスポンスが悪くなるし、どこかが正常でなくなっているなら異音がする。タイヤが鳴くならタイヤが無理しているし、ファンがいつまでたっても回り続けるならエンジンがよほど熱を持っている。

 ばろんは、コルサの声は聞こえているのに製品に対しては耳をかたむけようとはしていませんでした。まぁ、コルちゃんの声は聞こえてはいるもののそれに対する処置はあまりしたためしがないですが(笑)。

 聞こえない叫びを聞き取ってやり対処してやることが「モノと語り合う」ことだというのがこの記事の結論です。
 モノと語り合う感性を磨くということはつまり、常に疑問を持つこと。

「常に疑問を持て」という言葉もばろんの尊敬している人のお言葉です。

 ばろんが尊敬する人物は大体この類の格言をばろんに説き、且つ実践しています。

 もしもばろんがモノと語り合う事ができるようになれば、コルちゃんはばろんの手足のように自由自在に走ってくれることでしょう。いつの日かその日が来るはず・・・。







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